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『不思議の国のアリス』初版騒動


 1865年というのは『不思議の国のアリス』の初版の出版された年だが、この年1年の間に4種類の『不思議の国のアリス』が出版された。大ベストセラーとなったのですぐに増刷、という訳ではない。出版に絡んでトラブルがあったためにこういうことになったのだ。この辺の経緯をLewis Carroll HandbookとD.ハドスン『ルイス・キャロルの生涯』(高山宏・訳 東京図書)から簡単にまとめてみると次のようになる。
 1865年6月終わりまでに初版として『不思議の国のアリス』は2,000部が刷られていた。キャロルは7月15日にマクミラン社へ赴き、著者の献呈の辞を20部かそこらに書いたのだが、20日に再びマクミラン社へ現れた時には事情が変わっていた。テニエルが挿絵の印刷に不満で、一切合切やりなおすように、との手紙をキャロルに送っていたのだ。
 8月2日に初版を回収する決断がなされた。その時製本されて販売・贈呈されていたが、これらは回収された。
 未製本の1,952部については、当初キャロルの希望では紙屑として売られる筈だったのだが、ニューヨークのアプルトン社に売られることとなった。このうち1,000部が初版第2刷としてアメリカで製本・販売された。残り952部については、イギリスから来た本文とアメリカで印刷されたタイトルページとで製本し、初版第3刷としてアメリカで販売された。
 本家のイギリスでは刷り直した版を第2版として1866年の日付で販売された(但し1865年11月までには販売されていた)。
 以上4つの版をまとめると、

最初に印刷されたもの(初版):2,000部印刷したものの、出版直後にテニエルから印刷具合にクレームが付き、回収。製本されたのは48部のみ。
初版第二刷:上記初版本のうち、印刷されてはいたものの、製本されていなかったもののうち1000部をニューヨークの出版社(アプルトン社)が引き取り、アメリカ版として発売。
初版第三刷:同じく上記初版本のうち未製本の952部に、アメリカで印刷したタイトルページを付けて製本。アメリカ版として発売。
第二版:1866年の日付入り(1865年には売られていた)。英国で2回目に印刷された版。

 『不思議の国のアリス』初版というとき、よく話題に上るのがこの話題です。

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