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オンライン復刻『鏡世界』
二つの『アリス』物語のうち、日本で最初に紹介されたのは『鏡の国のアリス』であった。長谷川天渓(1876-1940)が『鏡世界』の題で抄訳したもので、雑誌『少年世界」の明治32年4月15日号(第5巻9号)から12月15日号(第5巻26号)まで連載されていた(全8回)。ここでは『アリス』の邦訳第1号である『鏡世界』の全文の画像を公開する。
目次
凡例
- 本ページの画像は雑誌『少年世界』(正確には近代文学館によるその復刻版)の、『鏡世界』掲載ページをコピーし、それをスキャナで読み込んだ後白黒コントラストを強調して製作した。
- 画像のスキャンは100dpiで行った。その結果画像が大きくなり、本文をスクロールさせながら読まなければならなくなったが、本文が読め、ルビも何とか読みとれる限界が100dpiであったためである。
- 元版が雑誌合本のコピーであるため、本の喉の部分が影になり、また、薄手の紙であるため裏の文字が映り込んでしまって一部読みにくい部分があるが、ルビは潰れていても本文そのものは読めるレベルを保った。
- 本文データの再利用を可能とするためからも、本来電子テキストにて翻刻するべきであったが、以下の理由により断念した。
- 原文は旧字・旧仮名遣いであり、一部JIS第二水準にない文字があったため、一般に使用される文字セットでは完全な翻刻が不可能であったこと。
- 原文では総ルビが振られており、電子テキストでルビを振ることが技術的に難しかったこと。ルビを無視するという選択肢も考えられたが、一部一般の慣用とは違う読み(当て字)があり、その部分のみルビを振るとなると、厳密な意味での翻刻とはならないこと。
- 会話体の表記が現在の「……」というように鍵括弧で括る方式と異なり、電子テキストに翻刻する際、そのままの形での翻刻は不可能と考えられたこと。
- 文字の反復記号の中にJIS第二水準にない、複数の文字の反復記号(「く」のような記号)があり、これを電子テスト上で表現するのが困難であったこと。
- 一部変体仮名が使用されていたこと。
- 原文に傍点の打たれているところがあり、HTMLでは再現不能と考えられたこと。
- 挿絵としてテニエルのイラストの模写(恐らく当時の印刷事情による)が使われており(但し全部のイラストが収録されているわけではない)、特に、第一回のJabberwockyの挿絵にについては、本文にも記載があり、すべての挿し絵を省略することが出来なかったこと。
- 今後、本文画像のガイド用として、本文を新字体・現代仮名遣い・現代表記にてテキスト化することを計画している。
著作権問題について
訳者・長谷川天渓は1940年に没しており、本文については著作権の保護適用外にある。挿し絵についてはテニエルの模写であることからテニエルの著作権に準じると解釈し、これも保護適用外にあると解釈した。底本が近代文学館による雑誌『少年世界』の復刻であり、著作権法上の問題も考えられたが、近代文学館による復刻が原本の完全なコピーであることから、「復刻」されたものについて復刻者の著作権は生じないと解釈し、画像を公開した。
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