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趣味のキャロル研究:基本文献紹介


大学での本格的な研究はともかくとして、あくまで在野の人間が趣味で研究・調査を行う場合、果たしてどの程度の文献を集めればよいか。「多々益々弁ず」というのは当然として、ある程度の目安は存在しているのではないか。ここでは、自分の経験の中から「アマチュア研究家」として揃えておきたい文献を紹介したいと思う。出来る限り入手しやすいものを心掛けたが、中には古書店で探さなければいけない文献もあることをお断りしておく。

テクスト

翻訳

翻訳の比較を行う場合なら、あらゆる翻訳を集める作業が必要となる。しかしキャロル研究という場合、翻訳は必ずしも多く必要であるとは思わない。ただし『アリス』以外の著作については、そもそも翻訳が一種類しかないものが多いので、その翻訳をテクストとする他ない。
『アリス』については、以下の二種を基本文献として揃えておきたい。あくまで訳文の質ではなく、註釈がある、という意味で基本文献に推す。

それぞれMartin Gardnerの註釈本で、上2冊がAnnotated 'Alice'の翻訳、下2冊がMore Annotated 'Alice'の翻訳である(ただし後者については東京図書の目録から姿を消しており、古書店で探す必要がある)。
『アリス』以外の翻訳については『アリス』以外のキャロルの著作のページに翻訳を掲載している。

原書

テクストとしては一冊でキャロルの著作が多く読めるという点から

は是非揃えておきたい。

Alice, SnarkについてはMartin Gardnerの詳細な註釈本があるので座右に置いておきたい。

特にThe Annotated 'Alice' The Definitive EditionにはWasp in a wigの原文も収録されているので、貴重だ。The Annotated 'Snark'は、現在はPenguin Classicsに納められ、題も単純にThe Hunting of the Snarkとなっている。ハードカヴァーではあるが、The Annotated 'The Hunting of the Snark' The Definitive Editionが、Gardnerの註としては最も新しく、かつ詳しい。

以下、全集に収録されていない作品について、必要と思われるものを紹介したい。
Aliceのみを対象にしたい場合には、Alice's Adventures Under Groundが活字で収録されている

を揃えると便利である。ただし、Undergroundについてはキャロル手書きのものを見ることも必要と思われるので、

も揃えておきたい本ではある。

また、Alice's Adventures Under Groundについては、大英図書館がオリジナル手稿本をCD-ROM化している。

このCD-ROMは手稿本の画像を、画面上でページを繰るように読むことができる。加えて全文の朗読音声と、手稿本についての解説ビデオが収録されている。

The Nursery 'Alice'は現在原書が流通していない。古書店で探す場合、値段の面、テクストの信用性から考えて

がお薦めである。このDover版はMacmillanから1890年に出た2版(1896年発行の値下げ版)をそのままペーパーバックのサイズにしたものなので、実質、Macmillanの版を持っているのと同じとなる。

Rectory Umbrella, Mischmasch, Pillow Problems, A Tangled Tale, Symbolic Logic, Game of LogicについてもDover Booksから出ている。

伝記

伝記では

が一冊本としてコンパクトにまとまっており、非常に有益な本であるが、現在絶版。古書店を探しても手に入れるべき本であろう。現在翻訳されている伝記で決定版とも云えるのが

である。座右に置いて決して損にならない本であるが、残念なことに原書にあった索引が日本語版では付いていない。これはハドスンの伝記も同様であるが、特にコーエンの伝記は大部のものなので、索引が必須と考えられる。場合によっては原書を一緒に購入すると便利かも知れない(Lewis Carroll: a Biography Morton N. Cohen, Vintage Books)。ペーパーバックでも出ている。
また、写真や画像が豊富であるという点からも、入手しやすく廉価であるという点からも、索引が完備してるという点からも

は是非揃えておきたい本だ。
また、厳密な意味では伝記と云い難いが、キャロルの生まれたデアズベリや育ったクロフト、リポン等の美しい写真と地図のあるところからも、実際にキャロルが暮らしたのがどんな所か解るという意味で

も、座右に置いて参考になる本である。年譜や巻末の参考文献等も充実している。

書簡集

基本文献として、入手が容易なものでは

がペーパーバックで出ている。日本語で読めるものでは

がある。後者は伝記としても読めるようになっている。

書誌

キャロルが生前出版した本についての詳細な書誌として、次の一冊は必須といえる。ただ、現在絶版であり、古書店で入手する必要がある。

事典

手近なリファレンスとして、以下の2冊は手許に置いておくと便利。

特に後者は、やや記述にエラーも見られるもののキャロルに関連した人物も立項されており(Dictionary of National Biographyにも載っていない人物も掲載されている)、特に歴史上でのキャロルを調べる場合には便利な一冊。

ヴィクトリア朝関連書籍

キャロル研究の際にはヴィクトリア朝に関する知識がどうしても必要になる事が多い。当時の文物や習慣が解っていないととんでもない誤解をするおそれがある。以下の4冊は、ヴィクトリア朝を知る場合に事典的に使えて便利なガイドとなる。

『図説 ヴィクトリア朝百貨事典』は、当時の文物を図版を使って説明しており、「これは一体どんなものか」が直観的に解る、非常に便利な一冊といえる。『図説 英国レディの世界』は、当時の女性と子供の生活誌に焦点を当てており、『図説 ヴィクトリア朝百貨事典』同様、豊富な図版で直観的に理解できるようになっている。
『エマ ヴィクトリアンガイド』は、漫画『エマ』(森薫、エンターブレイン)の副読本であるが、使用人社会をはじめとした当時の社会階層の生活誌、水晶宮のような当時の観光スポットを詳細な(著者自身の手による)イラストとともに説明した、初心者に非常に便利なガイドとなっている。『図解 メイド』も、同じくヴィクトリア朝の時代背景と使用人を解説するガイド。各項目が見開きにまとめられ、理解しやすい。

その他

キャロルは1867年にロシア旅行をしているが、イギリスにはそれ以前よりツーリズムの文化があった。キャロルの旅行も、その文脈から捉えることが可能である。

上記書籍は、19世紀初頭(キャロル生誕直前)までのイギリスのツーリズムについて書かれた本である。時代的にはキャロルの時代よりやや前、馬車旅行の時代までではあるが、イギリスにおける「旅」の文化的文脈を知るには良い本といえる。

最新の研究や、特定の分野における研究書は枚挙に暇がない。上記文献をベースに自分の興味を持った部分、調べたい分野が決まれば、次に何を読むかは自然と解ってくるだろう。

※本稿の文献については

より、アマチュア研究に便利と思われるものを抜粋して作成し、ヴィクトリア朝関連書籍等に関して新たに追加した。


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