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Jabberwocky私家訳「邪羽尾狗譚」


夜伎時尼 奴留思奈太菟歩(やき時に ぬるしなたうぶ)
高磨志年逗 津方爾於枳天(こましねづ つ方(かた)におきて)
見自蒙路來 煩婁何羽扶藤母(みじもろき ぼろがうぶども)
延為良安栖 有口細弩瑠奈梨(えしらあす うくせづるなり)

「氣を附けよ 邪羽尾狗(じゃばをく)に吾子
噛みし顎 摑みし爪を
氣を附けよ 蛇誣蛇鶩(じゃぶじゃぶ)鳥に
猛り吹く 蛮蛇(ばんだ)を避けよ」

手に取りし 戊玻璃(ぼはり)の劔(つるぎ)
長かりき 怨敵訪ぬ
休らひき 手無多夢(たむたむ)の木に
暫し立ち 思ひに耽る

怒荒れ(いかれ)たる 思ひで立てり
邪羽尾狗は 火のごとき眼で
吹き來たり 垂路(たるぢ)の森を
拔け出(いで)て 息を吹きつつ

一二(ひのふ)とや 刺して貫き
斬りつけし 戊玻璃の刃(やいば)
首を取り 骸(むくろ)を後へ
勝驅して いざや歸(かへ)らむ

「邪羽尾狗を 討ち取つたるか
我が腕へ 來よ照る吾子よ
佳き日なり あつぱれぞ彼」
喜びて 唏听(ききん)したれり

夜伎時尼 奴留思奈太菟歩(やき時に ぬるしなたうぶ)
高磨志年逗 津方爾於枳天(こましねづ つ方におきて)
見自蒙路來 煩婁何羽扶藤母(みじもろき ぼろがうぶども)
延為良安栖 有口細弩瑠奈梨(えしらあす うくせづるなり)


《参考》
「最初はそんなもので良かろう」ハンプティ・ダンプティが止めました。「難しい言葉が多いな。『やき時』は午後の四時のことだ――夕飯に食べ物を焼く時間だな」
「なるほど。それで『ぬるしな』は?」
「うむ、『ぬるしな』とは『しなやかでぬるぬるしている』ということだ。『しなやか』は『活発な』というのと同じだな。丁度、鞄のように二つの意味を一つに詰め込んでいるのだよ」
「解りました」アリスはよく考えて云いました。「じゃあ、『たうぶ』は?」
「うむ、『たうぶ』は『とうぶ』と読む。『とうぶ』はなにやら穴熊のようなものだな。――時には蜥蜴にも似ており――コルク抜きのようでもある」
「変な格好の生き物なんですね」
「左様。こやつらは日時計の下に巣を作ってな――それに、チーズを餌にしておる」
「それじゃあ、『こまし』と『ねづ』は?」
「『こまし』とは独楽す、つまり独楽のように回ることだ。『ねづ』とは螺子錐のように穴をあけることだな」
「それじゃ、『つ方』は日時計の周りの芝生ですね?」アリスは自分の勘の良さに驚いています。
「もちろんそうだ。『つ方』と呼ばれておるのはだな、広がっておるからなのだよ、ずっと前つ方へも。ずっと後(あと)つ方へも――」
「それにずっと横つ方へも」アリスが云います。
「まさにその通り。それで、だ。『みじもろき』は『脆くて惨め』ということだ(もう一丁、鞄だ)。そして『ぼろがうぶ』、これは『ぼろごうぶ』と読むが、痩せた、ぼろぼろの鳥で、羽根が身体中から飛び出しておってな――まるで――モップが生きいてるみたいなのだよ」
「それで、『えしらあす』は? ご迷惑でなければいいのですけど」
「うむ、『らあす』は緑色をした豚の一種だな。ただ、『えし』ははっきりせんな。思うに、『家を出(いで)し』を縮めたものではないかな――意味は、道に迷った、だ」
「それで、『うくせづる』の意味は?」
「うむ、『うくせづる』は、そうだな、呻くと囀るの間くらいで、中にくさめか何かが混じっておる。まあ、耳にすることにはなるよ。多分――あそこの森へ行って――一度でも聞いたら、納得するだろうさ。こんな難しい詩を聞かせたのは、誰なんだ?」

(『鏡の国のアリス』第6章「ハンプティ・ダンプティ」より)

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